生涯懶立身 生涯 身を立つるに懶(ものう)く
騰々任天真 騰々(とうとう)として天真に任す
嚢中三升米 嚢中(のうちゅう) 三升の米
炉辺一束薪 炉辺 一束の薪
誰問迷悟跡 誰か問わん 迷悟の跡
何知名利塵 何ぞ知らん 名利の塵
夜雨草庵裡 夜雨 草庵の裡(うら)
雙脚等間伸 雙脚(そうきゃく)等間に伸ばす
自従一出家 ひとたび家を出でてより
蹤跡寄雲烟 しょうせき うんえんに寄す
或与樵漁混 あるいは しょうぎょと混じ
又共児童歓 又た児童と共にたのしむ
王侯曷足栄 王侯なんぞ栄とするに足らん
神仙亦非願 神仙もまた願う所にあらず
所遇便即休 あう所あればすなわち休す
何必嵩丘山 何ぞ必ずしも嵩丘山のみならんや
乗波日新化 波に乗じて日に新たに化し
優游可窮年 ゆうゆう 年をきわむべし
冬ごもり 春さり来れば
飯乞ふと 草の庵(いおり)を
立ち出でて 里(さと)に行けば
たまほこの 道のちまたに
こどもらが 今を春べと
手鞠つく ひふみいむな
汝(な)がつけば 吾(あ)はうたひ
吾(あ)がつけば 汝(な)はうたひ
つきて唄ひて 霞立つ
永き春日を 暮らしつるかも
この里に手まりつきつつ子供らと
遊ぶ春日は 暮れずともよし
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